2010.1.14
「ゴリラ」
制作プロダクションから初めて個人的にお仕事を頂けたのは28歳の時、私が特殊メイク、特殊造形の仕事を始めて4年目の事でした。それは今でも人気シリーズとなっている、フジテレビの「世にも奇妙な物語/クリスマス・イブ特別編(’96)」の中の一編、「ゴリラ」という作品です。
日本との友好親善の為に、中国から輸送されるホワイトゴリラのフェイフェイが、道中体調を壊し、国民の前に姿を見せる事が難しくなってしまいます。国民からの支持率低下を危惧した橋田総理大臣は、回復するまでの替え玉として極秘に、猿のマネが得意な無名の役者(勝俣州和)にゴリラの扮装をさせ、メスのチャイチャイと共に動物園で生活させる事を計画。しかし間もなく本物のフェイフェイは死に、全ての隠蔽を計る政府はその男の身体にゴリラの皮膚を移植させ、本物のフェイフェイに仕立ててしまう。。。
という、かなり荒唐無稽な内容のものでした(笑)。
オスのフェイフェイ メスのチャイチャイ
いくつかのスケッチを描き彫刻へ。
実作業は約三週間。まだ自分の作業場を持てていなかったので、例によってアップアートさんの場所を間借りし、身体の方は上野さん達に外注でお願いする事にしました。
勝俣さんと、チャイチャイ役の菊田由美子さんの頭部と身体を型取り、顔は粘土原型を起こしフォームラバーへ、身体はウレタンスポンジを裁断して作り上げていきました。
三週間でゴリラ2体制作は中々キツいものがありました。
予算も含めその中で如何にベストの物を作るのか、常にテーマです。
ゴリラは人間と骨格が全く違う為、特殊メイクのように役者さんが顔を動かして表情を作るという事が出来ません。その為、ゴリラの頭部に仕込んだモータ等を外部からラジコン操作し、眉や唇を動かして表情を作るのです。
メカニカル制作は同じ造型作業の中でも、粘土彫刻やペイントといったものとは全く別の知識や感覚が必要です。私は元々機械系があまり得意ではありませんでしたが、特殊メイク、造型に関するSFXは全て出来るようになりたいと考えていたので、なんとか自分でやろうと、その分野に関してかなり長けていた上野氏にあれこれと相談に乗ってもらいながら、作り上げて行きました。
本物のゴリラ写真はもちろん、映画「愛は霧のかなたに」や「コンゴ」等、アメリカのゴリラスーツも参考にしました。
(当然レベルはあまりにも違うのですが。。)
ゴリラの腕は人間より長い為、エクステンションアームと呼ばれる延長の腕を装着します。
更に凝った場合ですと、中の演者が指を曲げるとゴリラの指も同調して曲がり、物を掴めるようにも出来ます。
顔が映らないゴリラスーツも勝俣さんご本人が装着して熱演。
制作会社は「ALWAYS・三丁目の夕日 」や、現在実写版の「宇宙戦艦ヤマト」を制作中の(株)ロボット。
監督片岡K氏、脚本はなんと「おくりびとの」小山薫堂氏!
この作品を終えた頃、私的にも色々あり、真剣に独立を決意。
工房探しが始まって行きました。